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プリンス×プリンセス

第21章 底無し沼

振り返れば、ティアナ様がレモンの皮を剥いていた。

この匂いか。

納得したのと同時に、その行動を意外に思う。

レモンの皮を手で剥く人を初めて見た。

「何をお作りになるのですか?」

飲み物には間違いないはず。

だけれど、そう聞かずにはいられない。

ティアナ様は皮を剥く手を止めて俺を見ると

「レモネードですけど…?」

何を聞くのかと言いたげな表情をしている。

レモネード…

その単語に、思わず顔をしかめてしまうと

「何故そんな顔をするんですか?」

ティアナ様も険しい顔になった。

「いえ…すみません」

とりあえず詫びを入れて、差し障りのない会話を考える。

「レモネードというと、レモンの砂糖漬けで作るものかと…」

言いながら、心の中が澱んでいく気がする。

昔、そんな作り方でレモネードを飲ませてくれた。

『ジューク、休憩しましょう?』

そう声をかけて、優しい笑みを向けてくれた…

「…ジューク?」

ティアナ様の問いかけに、はっと我に返った。

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