
私は官能小説作家の素材
第7章 壁と壁
なんだ、この生ぬるいような気持ちは…。
あの後、用事があると言ってすぐさま帰っていってしまった逢田くん。私も帰りたかったからありがたかったんだけどね。
いつの間にか、足取りは遅くなっていって気づけば、夕日が綺麗になくなりそうになっていた。
「もう、家につきそう」
それは、自分の家じゃなく彼の家。
『明日も来いよ』
あんな、言葉を言っておいて無視する女がいるわけがない。
その例が私だけど…。
「…真菜」
ビクッと体を震わせる。その声の主が
「綾葉っ…」
だったから。
