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クリスマスに奇跡を

第2章 奇跡のあとのクリスマス

「今日あたり、雪が降るかも知れませんね。」
俺の存在を無視するかのように、男は一人、天を仰ぎ呟いた。
そして、次の瞬間、男は耳を疑いたくなるような言葉を吐いた。


何故、病院に顔を出さないのか。
と・・・。


俺は目を丸くした。
帽子の隙間から覗き見えた瞳は真剣に俺を見つめている。
冗談で言っている訳ではないようだ。
だが、何故この男が知っている。
心が揺らぐと同時に驚愕のあまり、身体が強張っていく。


男の腕がすっと俺の肩を引き寄せた。
そして、子供をあやすみたいに俺の冷えた髪を撫で下ろす。
「まだ、あのことを?」
その言葉に、ますます俺の目が丸くなる。
俺は、男を押し退ける事も忘れて、口をパクパクと開閉するしかできなかった。


「やはり、そうでしたか・・・。」
伏せ目がちに言葉を紡いだ男が、赤い帽子を脱ぎ捨て、口元を覆った髭を取り除いた。
漆黒の髪がバサリと流れ落ちると、胸元からメガネを取り出し、掛ける。
するとそこには、見知った男の顔があった。


「あ、あ・・・なたは」
申し訳程度に微笑む男は、忘れもしないあの日、あの時、俺の行動を制止してくれた加害者遺族の男だった。
だが、何故この男がここにいるのだろうか。
「すみません、驚かせてしまって」
「はぁ。でもどうして・・・仕事は。」



「会社にも警察が来るようになってね。」
男は苦笑すると、指を首元で左から右へと動かした。
そうか、この人も罪を背負って・・・。







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