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わすれない

第2章 それぞれの傷

看護師は どうぞ と弁護士を名乗る男性を美咲の近くにまねいた。


茅瀬は失礼します。と頭を下げ室内に入ってきた。
美咲の顔をじぃーっと見つめニッコリ微笑んだ。


看護師はまたあとで来ると行ったが、弁護士はいても構わないといった。
私も、一人では心細かったので、時間が許すならここにいてほしい と頼んだ。



「さて、美里さん。あなたは私を覚えていないだろうが、私はあなたのお父上の顧問弁護士をしておりました。」



椅子に腰掛け、ゆっくりとした口調で話はじめた。
父の会社の顧問弁護士のほかに個人的にも弁護を引き受けていたという。


「何度かご自宅でお会いしたことがあるが、、、たしか、あなたのバースデーパーティーにご挨拶しました。」


ーーバースデーパーティー……?




私のバースデーパーティーは一度しか開いたことがない。それまでは家族だけでささやかなお祝いをしていただけだったのに、何故かその年だけは父の会社の人達や、母の友人が何人か招待されていた。



ーーなんとなく、懐かしい気がしたのはそのせい?




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