無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

バロンのアジトに着いた彼女は、恐る恐る戒斗に話しかけた。

『どうして、彼処に…』

「変な奴らを見かけたと思えば、その先にお前がいた。そして案の定お前は逃げる素振りをして路地に逃げ込んだ‥嫌な予感は次から次に当たっていき、奴らがお前を狙っていると確信した」

彼女は黙り込む。
追われた理由を知ってしまった彼女は、恐怖と威圧感に襲われていた。

「何故追われている…？人は見かけによらないというが、お前は何かしでかすような人間には到底思えない。何か理由があるんだろう…？」

『実‥は、その‥』

小さく震える彼女の声。
戒斗は何かを悟ったのか分からないが、敢えてそれ以上追及しようとはせず次にこう、素っ気なく言い捨てた。

「‥‥まぁいい、気が休まったら帰れ」

彼女はただ小さく頷いた。
今の彼女からは、あの時子供を咎めた強いものを感じられず、ただ弱々しい女の色を感じた。

ﾌﾟﾙﾙﾙ…──

彼女の携帯に電話が入った。
相手は、呉島光実からだった。