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手紙~天国のあなたへ~

第6章 別離

だが、我が父は私が都落ちした程度で諦める人ではない。英邁な方ではあるが、元々、ひどく猜疑心が強いのだ。私は幼い頃から、父上を見ているから、よく知っている。父上は恐らく地の果てまででも私を追い探し出し、生命を奪おうとするだろう。この世から私という人間がいなくならない限り、血眼になって探し回るはずだ。それに、もし私と共にあれば、見つかった時、そなたもただでは済まぬ。恐らく、留花も一緒に始末されるだろう」
 ―最後の望みの綱も切れた。
 この身はたとえどのようになろうと構いはしない。愃と共に死ねるのなら、歓んで黄泉路への旅にも向かうだろう。でも、愃は留花が共に死ぬことを望んではいない。むしろ、生きて欲しいと願っているのだ。
 愃を失って、たった一人で生きてゆけと言われるのは正直、留花にとっては残酷なことだ。それでも、愃が〝生〟を望んでいるなら、留花はたとえ愃との別れが身を裂かれるように辛くとも、受け止め乗り越えてゆかなければならない。

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