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手紙~天国のあなたへ~

第5章 夫婦

「旦那さま、何をお考えになっていらっしゃいますの?」
 その傍らに座り、顔を覗き込むと、愃は破顔した。もう、いつもの屈託ない彼に戻っている。
「先刻のそなたの話を改めて思い出していた」
「頂いたお茶を祖母にも呑ませてやりたかったと私が申し上げたこと?」
 「ああ」と、愃が頷くのに、留花は余計なことを言わなければ良かったとまた後悔に苛まれた。
「済みません。深い考えがあるわけでもないのに、つい口にしてしまったのです。思ったことをすぐに言葉にしてしまうのは考えものですね」

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