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手紙~天国のあなたへ~

第4章 野辺送り

 向かい合って念を押すように問われ、留花はこっくりと頷く。
「構いません。愃さまとなら、どんなことでも耐えられます」
 それは、かつての祖母への返事でもあった。
―あの男と一緒にいては、お前は不幸になる。あの男にこれ以上拘わってはならない。
 香順は確かにそう言ったのだ。
「判った。そなたが良いというのなら、私はまたここに来よう」
「おいでをお待ちしております」
「名残は尽きぬが、私はもう行かねばならぬ。次にそなたに逢いにくるまで、元気でいてくれ」
 愃が留花の頬にそっと触れる。
 別れを惜しむかのようにもう一度、留花のか細い身体を強く抱きしめ、愃は片手を上げ今度こそ背を向けた。

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