向かいのお兄さん
第54章 好きだから、食え
ゴクンと音が鳴ると、あたしはやっと直也から手を離した
『どうだった…?』
「…何が?」
『味…』
見間違いかな
見間違い…かな
ちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ
直也の口元が
上がった気がした
「普通」
『…』
「じゃりってしたけど、砂入ってんの?」
『…』
「毒、入れたの?」
『…』
あたしは直也の、首を見ていた
視界の上半分に入る直也の顔は
少しずつ少しずつ
意地悪そうな顔をしていった
「ケーキっぽかったけど、ほとんど粉末だったし?」
『…』
「今の、美咲が作ったの?
俺に毒味させたわけ?」
『ど…』
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