向かいのお兄さん
第36章 どっち
『直也はもう…あたしなんて…』
「あたしなんてとか、言うなって」
そっと肩に置かれた手は
あたしをぐっと引き寄せた
かっちゃんの胸に
埋もれるあたし
「つらいな…
つらいけど、美咲ちゃんみたいな可愛い子、ほっとくあいつが悪い」
『可愛くないです…』
「可愛いから俺が気にかけてやってるんだろ?」
『だから可愛くなぃです…』
かっちゃんの服を
ギュッと掴む
このたった数日の間に
直也に突き放されて
ぽっかり空いた穴を
どうにか埋めたくて
そのまま
うずくまっていた
優しさとかそういうものが
急に恋しく思えていたから…
「美咲ちゃん…」
『…?』
「直也のこと、少しくらいなら忘れさせてやるよ?」
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