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BL~中編・長編集~

第9章 ~大切なもの~

俺が泣き出したのを見て我に返ったのか、一馬は俺から手を離した。

「・・っ・・・」

「奏多・・・俺・・・」

一馬が俺に向かって伸ばしてきた手を、俺ははじき飛ばした。

「やめろっ!!」

「・・っ・・・」

ゆっくりと起き上がり、一馬を睨みつける。

「奏多・・・ごめ・・・・」

「俺に・・・・・触るな。」

一言そう言って乱れた服を整えると、俺は家から飛び出した。

そのままの足で、吉村と待ち合わせしている喫茶店に向かう。

「おー、ずいぶん遅かったな・・・って・・・・」

吉村は、俺の顔を見て言葉を止めた。

「どうしたんだ? なんかあったのか?」

「吉・・・村・・・・」

吉村の顔を見たら、なぜだか安心した。

「とりあえず、移動しようぜ。」

泣き出した俺を見て、吉村はそう言って俺を連れて喫茶店を出た。

行きついた先は、近くの公園。

「ほら、これ飲めよ。」

ベンチに座っていると、吉村が缶コーヒーを差し出してくれた。

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