
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第23章 揺れる心
「実は折り入って、ご相談というかお訊ねしたいことがあります」
「はて、ますますもって稀有なことだ。その話、とは?」
真悦の眼を不躾にならない程度に見つめながら、光王は低い声で言った。
「今日、沈家の息女が当家にお越しになったとか」
「―やはり、もう存じておったか」
父は苦渋を滲ませた声音で呟く。
「それで、対面は済ませたのか?」
その問いには、光王は無言で頷いた。
本当は顔も見たくなかったのだが、わざわざ義母に呼び出されては、断るわけにもゆかない。夕刻の対面を思い起こし、光王は自然、渋面になっていた。
自分の美しさを十分すぎるほど自覚した、生まれ育ちを鼻にかけた女だった。典型的な両班の我が儘お嬢さまといった感じだ。香花とは対極にあるタイプの女だ。ついでに言えば、彼の最も嫌いな部類の女でもあった。
「はて、ますますもって稀有なことだ。その話、とは?」
真悦の眼を不躾にならない程度に見つめながら、光王は低い声で言った。
「今日、沈家の息女が当家にお越しになったとか」
「―やはり、もう存じておったか」
父は苦渋を滲ませた声音で呟く。
「それで、対面は済ませたのか?」
その問いには、光王は無言で頷いた。
本当は顔も見たくなかったのだが、わざわざ義母に呼び出されては、断るわけにもゆかない。夕刻の対面を思い起こし、光王は自然、渋面になっていた。
自分の美しさを十分すぎるほど自覚した、生まれ育ちを鼻にかけた女だった。典型的な両班の我が儘お嬢さまといった感じだ。香花とは対極にあるタイプの女だ。ついでに言えば、彼の最も嫌いな部類の女でもあった。
