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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第23章 揺れる心

 しかし、光王は、知っている。香花当人は、全く無自覚の中にやっていることで、彼女の中には男を誘惑する気なぞ欠片ほどもない。いっそのこと、少し良人の気を引くくらいのことをしても良いものをと思いそうになるほど、香花は無防備であり、そういったところは奥手だった。
 何度も交わって、身体は光王の愛撫に素直に順応していっても、根本というか―彼女の中の無垢な部分はずっと変わっていない。その変わらなさが、光王は実は嬉しかったりする。
 多分、香花がつい今し方、彼に〝変わっていない〟とどこか嬉しげに、ホッとしたように言ったときの気持ちも、今の自分と似たようなものだったに相違ない。
 たとえ属する社会は異なっても、根っこの部分―自分を形作るものは永遠に変わらないだろうし、また、変わりたくないとも思った。

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