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　言い置き、光王は照れたように紅くなり、しきりに額をかいた。
「ああ、柄じゃねえな。まるで儒学の教師のような科白じゃないか。自分がこんな分別くさい道理を他人に説くようになるとは、考えもしなかったぜ」
　赤い顔でしきりにぼやく光王を見ながら、香花はぼんやりと考えた。
　この男(ひと)に嘘はつけない。いや、ついてはいけない。これほどまでに真摯に向き合ってくれる男にその場限りの嘘など到底、言えるものではない。
　かと言って、義母のことを悪く言わずに、先刻の出来事を伝えるのはかなりの至難の業であった。香花は慎重に選び取った言葉を紡いでゆく。
「さっき、お義母上さまに呼ばれたの。行ってみたら、お義母上さまのお部屋にお客さまがお越しになっていたわ」
　やはり、あのことか。光王は苦々しい想いで香花の話を聞いていた。