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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第17章 夢の終わり

 剣の遣い手である光王がそう易々と殺されるとは思えないが、理蓮とて必死なのだ。追いつめられたら、どのような強硬な手段に出るかは判らない。
 万が一、光王の身に危険が及んだらと考えただけで、香花は恐怖に叫び出しそうになる。自分の身よりも、ただただ光王の身が案じられた。
 理蓮がどこか冷めた口調で呟く。
「どうやら噂は真であったようだ。そなたと光王という男が実の兄妹ではないというの話、実のところ半信半疑であったが、今のそなたを見ておれば、紛うことなく、その光王という男を慕うておることが判る」
 半ばひとり言のように理蓮の唇から言葉が零れ落ちた。
「素花だとて、生きていれば、そなたのように恋を経験し、慕う殿御の許に嫁いで幸せになれたものを」
 香花は眼を瞠った。
 理蓮の眼が濡れている―。
「私の娘におなりなさい」
 また、優しげな口調に戻る。

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