
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第17章 夢の終わり
「流石は私が娘にと見込んだだけはある。自分の置かれた立場をよく心得ているようだな」
小屋の外で声が聞こえたかと思うと、いきなり扉が軋んだ音を立てた。
その物音に思わず身を竦ませたのは香花だけではなく、ソンジュも同じだ。
入ってきたのは、むろん、理蓮である。
「どうだ、少しは考えが変わりましたか?」
理蓮の物言いが急に優しげなものになった。いつ今し方とは、まるで別人だ。
その視線が粥の入った碗に向けられた。
理蓮は感情の窺えない瞳でしばらく全く手の付けられていない碗を眺めている。やがて、自ら碗を手に取り、木匙で掬った。
「さあ(チヤー)、お食べなさい」
相変わらず手脚を縛められたままの香花の口許に匙を持ってゆく。
しかし、香花はすっと顔を背け、理蓮の方を見ようともしない。
理蓮の細い眉がかすかにひそめられた。
「あくまでも意地を張り通すつもりか。強情な娘だ。私の素花はこのような情の強(こわ)い娘ではなかった。母の言うことに逆らったことなどのない、素直な娘であったに」
小屋の外で声が聞こえたかと思うと、いきなり扉が軋んだ音を立てた。
その物音に思わず身を竦ませたのは香花だけではなく、ソンジュも同じだ。
入ってきたのは、むろん、理蓮である。
「どうだ、少しは考えが変わりましたか?」
理蓮の物言いが急に優しげなものになった。いつ今し方とは、まるで別人だ。
その視線が粥の入った碗に向けられた。
理蓮は感情の窺えない瞳でしばらく全く手の付けられていない碗を眺めている。やがて、自ら碗を手に取り、木匙で掬った。
「さあ(チヤー)、お食べなさい」
相変わらず手脚を縛められたままの香花の口許に匙を持ってゆく。
しかし、香花はすっと顔を背け、理蓮の方を見ようともしない。
理蓮の細い眉がかすかにひそめられた。
「あくまでも意地を張り通すつもりか。強情な娘だ。私の素花はこのような情の強(こわ)い娘ではなかった。母の言うことに逆らったことなどのない、素直な娘であったに」
