
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第13章 十六夜の悲劇
「綺麗」
見惚れていると、景福の静かな声音が聞こえてきた。
「亡くなった父さんが母さんに贈ったものなんだ。結婚を申し込んで母さんが承諾した時、記念に贈ったんだって。何でも、そのときに父さんが持っていた全財産をはたいたみたいだ。死ぬ覚悟で買ったものらしいって、母さんが笑いながら話してたよ」
「素敵な話ね」
恋い慕う男から想いを打ち明けられ、求婚される。その際にこんな綺麗な首飾りを贈られるなんて、考えただけでも溜息が出てしまう。
そこで何故か、ふっと光王の顔がよぎり、香花は慌てて首を振った。
香花がうっとりとしていると、景福は笑った。
「父さんが亡くなった時、母さんがこれからは僕が代わりにこの形見をお守り代わりに持てと託されたんだ」
景福が首飾りを元に戻し、空を仰ぐ。
「父さんが急に亡くなった時、昌福はまだ、たったの五歳だった。だから、凄く淋しがってね。それまでもよく僕にまとわりついていたけれど、いっそう懐いて後ばかり追いかけてくるようになった」
見惚れていると、景福の静かな声音が聞こえてきた。
「亡くなった父さんが母さんに贈ったものなんだ。結婚を申し込んで母さんが承諾した時、記念に贈ったんだって。何でも、そのときに父さんが持っていた全財産をはたいたみたいだ。死ぬ覚悟で買ったものらしいって、母さんが笑いながら話してたよ」
「素敵な話ね」
恋い慕う男から想いを打ち明けられ、求婚される。その際にこんな綺麗な首飾りを贈られるなんて、考えただけでも溜息が出てしまう。
そこで何故か、ふっと光王の顔がよぎり、香花は慌てて首を振った。
香花がうっとりとしていると、景福は笑った。
「父さんが亡くなった時、母さんがこれからは僕が代わりにこの形見をお守り代わりに持てと託されたんだ」
景福が首飾りを元に戻し、空を仰ぐ。
「父さんが急に亡くなった時、昌福はまだ、たったの五歳だった。だから、凄く淋しがってね。それまでもよく僕にまとわりついていたけれど、いっそう懐いて後ばかり追いかけてくるようになった」
