
恋は甘い香りと共に
第1章 はじまり
帰る宣言を最後までさせてもらえずに奥から声がかかってしまった。
「オーダー杏里ちゃんよろしくです!さっきレジの調子が悪くってトラブったんですよ、またかなあ…」
さっき渡した伝票をまた戻され、奈津美ちゃんはまたそっちへかけていってしまった。
私はなんとか力を振り絞って立ち上がった。
このケーキ…取りに行かなきゃ。
テーブルに届けるのは奈津美ちゃんに頼めばいい。
もう関わりたくない。
私は今出来たばかりのショコラフランボワーズとレアチーズケーキとショートケーキをお皿に乗せ、お盆にセットした。
よし。
「奈津美ちゃ…」
声をかけようとした先、レジで一生懸命やっている奈津美ちゃんが目に入った。
