
恋は甘い香りと共に
第1章 はじまり
家と店を繋ぐ廊下を通り、ドアを開ける。
この瞬間が一番好きだ。
開いた途端に私を包み込む甘い香りが学校での疲れを一瞬にして拭ってくれる。
店にはお客さんが結構来ていた。
「お、杏里お帰り。カフェの方行ってくれる?」
近くにいた母が声をかけてくる。
「りょーかい。あ、明日慎之介んちにイチゴのホールケーキ5号ね」
「ったく…わかった。父さんに伝えとくね」
「ありがと!じゃ、行ってくる」
うちの店はケーキのみも買えるけれど、奥にそのケーキを食べれるカフェみたいな場所がある。
この春新しく出来たばかりではあるが入りは上々だ。
