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精霊と共に 歩睦の物語

第5章 花火を見るって大変

 人ごみを分けて自販機の方に走っていく。

 花火の音に紛れて、違う方から音と衝撃波が来る。
 観客の中には気が付いた人もいるが、ほとんどの人が気にしていない。

(楓先輩…まだ、戦っているのかな?)
 人ごみの中を縫うように、自販機までいく。
 今まで、気がつかなかったけど、よく周りをみると、さっきの大人の人が警護してくれている。

(そうか…僕って今もあの大人の人たちに守られているんだ…)
 歩睦は自分を守ってくれてる人がたくさんいる事を考えていた。

(僕の力って、そんなに大事なのかな…)
 浴衣の中からペンダントを出して、見つめる。

(トキが来れば分かるかって何で、お母さんもお父さんも説明したがないんだろう…)
 自販機にお金を入れて、頼まれた物を買って遥香たちの待つ場所まで急ぐ。


「歩睦ちゃん!」
 歩睦の背中に誰かが抱きついてきた。

「わ!」
 抱えていた数本のペットボトルを投げ出してしまる。

「やっばっ!」
 とっさに、赤いペットボトルだけ握る。

 ドドンッ  ゴロゴロゴロ
  ペットボトルが転がっていく。

「柾季のだけは落とさなくて良かった」
 歩睦はペットボトルを持って、ホッとする。


「あ!ごめぇん。何か持ってたぁ?」
 いつもの、オネエ口調で謝る楓。

「あーもう、楓先輩はいつも急に抱きつくから、ビックリするでしょ!コーラだけ死守しましたけど…」
 ブツブツいいながら、お茶を拾う歩睦。

「ごめんね。怒らないで!」
 楓は急いで、お茶を拾いながら謝る。

「いいですよ、僕もちょっと、考え事してましたから…」
 楓を直視できない歩睦。

「考え事?」
 目を合せない歩睦の顔をクイッと、持ち上げられる楓。

「あ…」
 歩睦の頬に涙が流れた。

「ど、どうしたの?どこか、痛いの?」
 楓が歩睦の顔を見て、ギョッとした。

「どこって、この角度…痛い…」
 歩睦はそう答えた。

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