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精霊と共に 歩睦の物語

第5章 花火を見るって大変

     *

「歩睦ちゃん!どこに隠れたの?あんまり離れると、迷子になるよ」
 楓が、歩睦を探している。

「はー…」
 歩睦は屋台と屋台の間に身を潜める。

「どこぉ…」
 楓が目の前を通り過ぎていく。


「はーやっと撒けた…」
 楓とは反対方向に歩き出した。

(最近、楓先輩ベタベタしすぎ。あれじゃ…誤解されるよ…)
 歩睦は急ぎ足で花火を見るスポットに向う。


「…やっと、見つめた」
 お面を頭に載せて、わた飴をほお張る10歳くらいの女の子がゆっくり歩睦に近づいて来る。

 真っ直ぐ、誰ともぶつかる事無く近づいて来る。

(なんか、変だ)
 歩睦が、そこ子から目が離せない。

「お兄ちゃん…遊ぼうよ」
 お面の子は、いつの間にか直ぐ目の前に立っていた。

「お、お嬢ちゃん…だれ…」
 なぜか、後ずさりする歩睦。

「…ふふ…ねー、遊ぼうよ…」
 歩睦の浴衣を掴もうとするお面の子。


「歩睦!」
 楓が歩睦をグイッと後ろに引っ張る。

「せ、先輩?」
 急な行動に驚く歩睦。

「歩睦に触るな!」
 守るように前に立つ。

「…さっき遊んでくれたお兄ちゃん?また、邪魔するの?」
 わた飴を全部食べ終わって、割り箸までガジガシと音を立てながら口の中に入れる。

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