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掌の浜辺

第1章 春 - story -

 「早く!!」
 「待てって!」
 余裕を持って9時間パックにしたのだが、ぎりぎり。あまりにも寝すぎた。時間を気にしなさすぎた。しかも、こういうときに限って部屋を汚いままにしてしまってかえって掃除を大変にしてしまう。もう1分もない。いいや、これで。見かけは大丈夫だと思うし、ってことで部屋を出てきたところ。戸を閉め、受付に向かう。
 「ありがとうございます。ソノダ様、オノザト様、会員証のお返しです」
 「はい」
 「お会計の方ですが、9時間パックにダブルル-ムプランをおつけして、3750円頂戴致します」
 お金を出す。
 「はい、ちょうど頂きます」
 レジを打つ。
 「レシ-トのお返しです」
 「はい」
 「ありがとうございました。またお越しをお待ちしております」
 自動ドアは開き、2人は家路についていった。

 カリカリカリ
 オレは明日の実習打ち合わせの準備をしている。家に帰ってきたのが朝方の4時過ぎで、それからすぐ寝て起きたのが昼すぎの午後2時半。それからゆっくりしていたら、いつのまにか夜の7時を回っていることに気づき、さらに実習日誌に書くことがあったということをすっかり忘れていて、今あせって書いているところ。あ-。終わんのか。てか手こるな-。文章を手書きでなんかほとんどしね-し。あ。間違えた。消しゴム、消しゴム。
 ボトン
 「おいしょ」
 消しゴムを取ろうとしたら、指に引っかけてしまい、机の上から床に落ちた。それを拾いあげ、再び日誌と向かい合う。


疲労がたまると
集中できなくなるというのは
人間だからなのか
それとも生物全般に言えることなのか
どちらだろうと考えてみても
答えは一目瞭然だと思う
人間でなくたって疲れるはず
獣、鳥、昆虫、魚
獲物を狙ったり狙われたりして
走る、飛ぶ、逃げる、泳ぐ、と
彼らも疲れを感じるのでは
実際に彼らになってみないとわからないが
…たぶんそうだ

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