
夢幻の蜃気楼
第4章 “蒼き魔王”
不敵な笑みを湛えて上から見下ろす少年に恐怖を抱いても、きっと誰も咎めやしないだろう。
それは僕だけではなく、今まで優勢だった二人組も然りだ。
「もしかすっと頭がイカれたかもしんねえから、早く病院に連れてった方がいいかもしれねぇな。……といっても、ちゃんとした病院があればだけどな」
相手を思いやる発言ではない。優劣をはっきりと見せつけるための、非常な言葉。相方を心配する男の悔しさからくる唸りが僕の耳にも届く。
圧力を掛けるサファイアアイズの双眸に身を収縮している赤毛男は、少年に警戒しながらも相方を何とか起こし、相手の腕を自分の肩に纏わせる。
「しっかりしろ」
まだ朦朧として、足取りも危うい相手を労わりながらも現場から去ろうとする男は、最後に階段上にいる美少年に目を吊り上げた。
「お、覚えていろよ! 絶対許さねえからな!!」
端からみると弱小動物がなけなしのプライドを総動員して、無理に背伸びして威嚇しているようで哀れにさえ映って見える。捨て台詞を残して相棒と共に去る姿は、どことなく哀愁を誘う。
夜の闇に溶けて消えた二人組にやっと安堵の息を吐く僕の耳に、真上から呆れたような声が落ちてきた。
「……ったく陳腐な捨て台詞だな。いかにも自分が弱いと言ってるようなもんだ」
消えて行った二人の方向へと目線を置いたまま、腕組みをした彼の、あまりにもさまになっている姿に、僕は少なからず感嘆の息を漏らしていた。
ぼやけた半月の下に佇む少年は、見るものを魅了させる美しい魔王と称するに値する雰囲気を醸し出していた。
それは僕だけではなく、今まで優勢だった二人組も然りだ。
「もしかすっと頭がイカれたかもしんねえから、早く病院に連れてった方がいいかもしれねぇな。……といっても、ちゃんとした病院があればだけどな」
相手を思いやる発言ではない。優劣をはっきりと見せつけるための、非常な言葉。相方を心配する男の悔しさからくる唸りが僕の耳にも届く。
圧力を掛けるサファイアアイズの双眸に身を収縮している赤毛男は、少年に警戒しながらも相方を何とか起こし、相手の腕を自分の肩に纏わせる。
「しっかりしろ」
まだ朦朧として、足取りも危うい相手を労わりながらも現場から去ろうとする男は、最後に階段上にいる美少年に目を吊り上げた。
「お、覚えていろよ! 絶対許さねえからな!!」
端からみると弱小動物がなけなしのプライドを総動員して、無理に背伸びして威嚇しているようで哀れにさえ映って見える。捨て台詞を残して相棒と共に去る姿は、どことなく哀愁を誘う。
夜の闇に溶けて消えた二人組にやっと安堵の息を吐く僕の耳に、真上から呆れたような声が落ちてきた。
「……ったく陳腐な捨て台詞だな。いかにも自分が弱いと言ってるようなもんだ」
消えて行った二人の方向へと目線を置いたまま、腕組みをした彼の、あまりにもさまになっている姿に、僕は少なからず感嘆の息を漏らしていた。
ぼやけた半月の下に佇む少年は、見るものを魅了させる美しい魔王と称するに値する雰囲気を醸し出していた。
