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いつもそこには、君がいて

第3章 3 金曜日


 明け方チラチラと降り出した雪が、アスファルトの上にうっすら積もったせいで、駐車場から店舗裏にある社員出入口まで点々と私の足跡が残っている。



 ――ピピッ、ピーッ!

『セキュリティーを解除しました』


 今日も朝一番に鍵を開けた。

 今はまだ、朝の6時少し前。

 いつもは、あと1時間くらいしないと開けることもないのだが、創業30周年祭の特売初日の今日は、このくらいから準備しないと追いつかない。

 お盆やお正月に次いで忙しくなるはずだから。

 足早にタイムカードを押してから事務所に向かうと、机の上には今日からの3日間のチラシ、それに応じたプライスカードとポップが輪ゴムで綴じて置いてあった。

 それらを手に取り、自分の作業場へと向かう。

 まだ誰もいない店内、聞こえてくるのはジーンという売場の冷蔵ケースの作動音と、自分の足音だけ。

 この静けさが、私は好きだ。

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