
いつもそこには、君がいて
第2章 2 水曜日
「ほんと、馬鹿ですよね。すみませんでした」
「いえいえ、別に気にしてませんよ」
自分の気持ちの整理がついたせいか、下げる頭もほどよく軽くて。
「やっぱり私、まだここ、離れたくないなって思います」
「それ、いつ言ってくれるんだろって思ってました」
福田さんにも自然とまっすぐ顔をむけることができている。
「ふふふ、すみません。あ、菊川くんにも謝らな……っ、っ、ハクション!」
可愛いげのないデカい音を放ったくしゃみは月まで行ってこだました。
「おっと、大丈夫ですか? 今日、だいぶ冷えてますから、中、入りましょ?」
中に戻れば確かにあったかいだろうけど、でも今は、キーンと冴えた空気をこのまま吸っていたかった。
「もう、今日は仕事しないで帰ります。なんかスッキリしちゃって」
「そういうのも、いいんじゃないですかね。たまには頑張らない日があったって」
“頑張らない”か。
肩からも奥歯からも力を抜いて、こうしてただ夜風に当たるのも悪くない。
