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いつもそこには、君がいて

第2章 2 水曜日


「あんまり怒ると、かわいくないですよ、フジコさん」

「はぁ?」

 喧嘩ごしの一声が無愛想に出てきた。

 もちろん、私の口から。

 いつもなら、いつもの私なら、「うるさいっ」とか「黙れっ」とか、そんな言葉を笑いながら返したはず。

 でも、今はそれができないくらい、菊川くんの言葉は私の胸の何かのスイッチを押してしまっていた。


「そんなこと、菊川くんに言われたくないんだけど」

「ほら、めちゃくちゃ怒ってるじゃん。そんな怖い顔してると、嫁の貰い手なんて見つかりませんよ〜だ」

 菊川くんは、いつも通り。

 いつも通りの“じゃれ合い”をしてくれているのだけれど、だめだ、今の私は無理……

 怒りやらむなしさやら、あらゆるモヤモヤを閉じ込めるには、もう、ダンマリしか方法がなかった。

「あれ?、どうしたんすか、フジコさん」

 “どうした”だ?

 そんなのわかってたらこんなことになっちゃいないし、上手く言えたところで菊川くんにはこれっぽっちもわかっちゃもらえないでしょうよ。

 胸の中で、自分の消化できないイライラに敢然と口答えをしつつも、当の菊川くんには返事ができない。

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