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いつもそこには、君がいて

第2章 2 水曜日


 その背中を目で追いながら、さっきまで菊川くんが座っていた椅子に座り、書類に向かった。

 外壁一枚隔てた一服中の話し声を、ものすごく遠くに感じながら。




 菊川くんの書いた発注や売り場展開の計画は、私のそれとはまるで対称的。

 確かにデータに基づいているとは言い難いけれど、私にはない大胆な発想と度胸が羨ましくも見えてくる。

 もったいないなぁ……

 そう思うと、菊川くんのあのやる気無さげな態度がじれったく感じた。

 まだまだ彼には伸びしろが沢山あり、この先が明るい。

 対して、自分はどうだろうか……

 頭でっかちなだけで、理屈っぽくて、余裕もなにもなくなってる。

 やっぱり限界なのかな。



 こなれた作業のように、菊川くんの残した書類の穴埋めをする自分。

 当たり障りのない数字を並べるだけの自分が、なんだか妙に虚しくなる。



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