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温もり

第3章 殺処分

 食堂を兼ねたプレイルームには、掃除係達が準備を始めていた。
 一日いっぱい研究室のあちこちを掃除している彼らの手はいつも荒れていて、ザラザラだ。ラディは気づけばそれを治療するが、彼女も毎日居る訳ではないので、綺麗な手で居る方が珍しい。

「食事は済んだのか?」

 いつもは食事をしてから準備をしているので、珍しく思った零九は尋ねる。近くに居たニニ四の一二が振り向く。

「さっきラディが来て出してったやつな」

 答えつつ、ため息を吐いてニニから零九を離し、こそりと耳打ちする。

「お前、昨日ラディと何してたんだ? 研究員達が騒いでたぞ?」

「え?」

 まさか、あの事かと零九は珍しく動揺を顔に出し、それを見たニニ四は更にニニから零九を離す。
 研究所のあちこちを回る彼らの耳は早く、ある意味でLLの中で情報屋のような存在にもなっていた。大概が、どこの自販機に新しいジュースが入ったとか、研究員が実験を失敗したとか、成功したとか、そんな事だが。

「何してるのか聞いても良いか?」

「……言えない」

 ニニ四と視線を合わせず、零九は答える。その態度だけで相当に不味い事になっていると感づいた彼は零九の肩を叩く。

「俺らに出来る事があるなら、絶対に言えよ。お前も、二二も、何でもかんでも背負い過ぎだ」

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