
温もり
第13章 九日目
そんな様子を横目に、ニニ三が目の前を通り過ぎるが、もう零九は彼らに訴える事を諦めてしまっていた。指先を濡らした水を舐めるのに専念し、自分が惨めだと思わない様にした。
彼らの態度は冷酷だと思う。だが、彼らにはどうする事も出来ないのだ。出来て、死期を早める事だけ。それも、リスクがない訳ではないだろう。
まだ死ぬ訳にいかない零九には、この状況でも耐える事しか出来ない。
手も足も、腹も胸も顔も肩も首も、全身の痛い箇所などない。寝ても覚めても鋭い痛みと疼く痛みに苛まれ、強い空腹も喉の渇きにも、物理的な力を持った恐怖に押し潰されそうにもなる。だが、もう長くはない自分が、ニニをここから解放させる方法は、これしかないのだ。耐えるしかないのだ。そう、言い聞かせるしかない。
それでも、床を這い、水を求めて指を舐める事に、涙が出そうな程の惨めさを感じずにはいられなかった。おそらく、涙が出なかったのは体の水分が少ないせいだろう。
ニニ五はその様子を何も言えず、黙って見ている事しか出来なかった。彼が衰弱し、死んで行くのを見て、そして、その体を処理しなくてはいけないのだと理解している。その上で彼が言葉を持たない失敗作ではないと、仲間には言えなかった。
彼らの態度は冷酷だと思う。だが、彼らにはどうする事も出来ないのだ。出来て、死期を早める事だけ。それも、リスクがない訳ではないだろう。
まだ死ぬ訳にいかない零九には、この状況でも耐える事しか出来ない。
手も足も、腹も胸も顔も肩も首も、全身の痛い箇所などない。寝ても覚めても鋭い痛みと疼く痛みに苛まれ、強い空腹も喉の渇きにも、物理的な力を持った恐怖に押し潰されそうにもなる。だが、もう長くはない自分が、ニニをここから解放させる方法は、これしかないのだ。耐えるしかないのだ。そう、言い聞かせるしかない。
それでも、床を這い、水を求めて指を舐める事に、涙が出そうな程の惨めさを感じずにはいられなかった。おそらく、涙が出なかったのは体の水分が少ないせいだろう。
ニニ五はその様子を何も言えず、黙って見ている事しか出来なかった。彼が衰弱し、死んで行くのを見て、そして、その体を処理しなくてはいけないのだと理解している。その上で彼が言葉を持たない失敗作ではないと、仲間には言えなかった。
