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第26章 case10 【私ハ貴方ノ手ヲ握ッテ】 3

感情のままに叫ぶ私に囁く声は。

「絢乃」

抱き締めていても、何時もの様に強く抱きしめ返してはくれない、斎。

お互い抱き締めあっているものの、回る腕は頼りなく、どちらかといえば、私に斎が寄りかかっている状態で・・・。

「手を、握って」

「嫌だ!!」

「絢乃」

「イヤ・・・だぁ・・・」

首を振る。目に熱が宿る。喉から声が出にくくなる。嫌だ、何言って・・・。

「結界は、消えた」

「・・・ぇ?」

「自由だ」

「うん」

「いくよ」

・・・それには反応できなかった。『行く』にも『逝く』にも・・・聞こえた、から。

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