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第19章 case8 【私ニ伸ビル複数ノ手】 1

「絢乃、明日から学校な」

斎を見ると、不承不承といった感じのまま、私に言う。

「学校、行けるの?」

「そりゃそうだろ」

均さんにとっては、当たり前らしい。その当たり前が当たり前じゃなかったのだけど・・・。

「ただし、均は非常勤講師として、学校に入れ。絢乃を守れ」

「それ、前言ってた役割ってヤツ?」

「そう。学校に直接入って、一族の動きを探れ。絢乃に手を出させるな」

「それは、お願い?それとも・・・命令?」

「命令だ。絢乃、行くぞ」

つかつかと近付いて、腕を捕まれると、そのまま部屋へ連れて行かれそうになる。

「ま、待って」

私は慌てて靴を脱ぎ、腕を引かれるまま、歩く。

「斎は、均さんの事、信頼してるんだね」

斎にとって敵なら、屋敷に易々と入れないと思う。だから、全面的に信頼してる、のかと思ったのに、

「それは違う。信用も信頼もしてない」

何気ない一言の心算で言った言葉だったけど、斎から帰ってきたのは、否定だった。

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