
山茶花(さざんか)の咲く村~男装美少女の恋~
第9章 生まれ変わる瞬間
「―私に何をしたの?」
「知れたことよ、そなたの呑んだ酒に少し細工をしてやったのだ」
「薬を入れたのね」
尚凞が眼を瞠った。
「何と、そなたは物もろくに言えぬ鈍な娘ではなかったのか!?」
ふいに尚凞の双眸が妖しく光った。
「怪しい娘だな。知恵遅れを装い、儂に近づくとは何か魂胆でもあるのか?」
やはり、この男はただの強欲な女好きではない。油断ならぬ抜け目なさとしたたかさを合わせ持っている。
凛花は事を楽観しすぎたのだ。読みが甘かったともいえよう。ただ、県監を怖れるだけでなく、狡猾極まりないこの男のその怖ろしさをもっと分析し、対策を考えるべきであった。
しかし、今更悔やんでみても始まらない。
「儂をあまり甘く見過ぎたな、娘よ。だが、儂にとっては好都合ともいえる。お陰で良い目を見られるわ」
県監の声が徐々に聞こえなくなり、意識が遠のいてゆく。
「教えてやろう。酒に混ぜた薬は痺れ薬だが、同時に媚薬の効き目もある。そなたの身体が火照っているのはそのせいだ」
「―」
凛花は絶望のどん底に突き落とされた。
媚薬? この男は媚薬を私に呑ませたというの?
凛花は懸命に手脚を動かそうとしたが、まるで石と化してしまったかのように微動だにしない。
尚凞の指先がツツっと凛花の頬を撫でると、凛花の細い身体が魚のように跳ねた。頬を撫でられただけで、身体中に妖しい震えが漣のように走り抜けてゆく。これが媚薬の効果なのだと改めて知った。
その間にも、熱に浮かされた身体は焔のように熱くなった。
「―熱い、熱いわ」
まるで自分ではない別の人間が発しているかのような声は艶めいていて、媚を含んでいるようでさえあった。
「よしよし、そんなに熱くて堪らぬなら、儂が脱がしてやろう」
尚凞の手が夜着の前で結んだ紐に掛かる。
シュルシュルと紐が解ける音が夜陰に妖しく響いた。
「い―や」
「知れたことよ、そなたの呑んだ酒に少し細工をしてやったのだ」
「薬を入れたのね」
尚凞が眼を瞠った。
「何と、そなたは物もろくに言えぬ鈍な娘ではなかったのか!?」
ふいに尚凞の双眸が妖しく光った。
「怪しい娘だな。知恵遅れを装い、儂に近づくとは何か魂胆でもあるのか?」
やはり、この男はただの強欲な女好きではない。油断ならぬ抜け目なさとしたたかさを合わせ持っている。
凛花は事を楽観しすぎたのだ。読みが甘かったともいえよう。ただ、県監を怖れるだけでなく、狡猾極まりないこの男のその怖ろしさをもっと分析し、対策を考えるべきであった。
しかし、今更悔やんでみても始まらない。
「儂をあまり甘く見過ぎたな、娘よ。だが、儂にとっては好都合ともいえる。お陰で良い目を見られるわ」
県監の声が徐々に聞こえなくなり、意識が遠のいてゆく。
「教えてやろう。酒に混ぜた薬は痺れ薬だが、同時に媚薬の効き目もある。そなたの身体が火照っているのはそのせいだ」
「―」
凛花は絶望のどん底に突き落とされた。
媚薬? この男は媚薬を私に呑ませたというの?
凛花は懸命に手脚を動かそうとしたが、まるで石と化してしまったかのように微動だにしない。
尚凞の指先がツツっと凛花の頬を撫でると、凛花の細い身体が魚のように跳ねた。頬を撫でられただけで、身体中に妖しい震えが漣のように走り抜けてゆく。これが媚薬の効果なのだと改めて知った。
その間にも、熱に浮かされた身体は焔のように熱くなった。
「―熱い、熱いわ」
まるで自分ではない別の人間が発しているかのような声は艶めいていて、媚を含んでいるようでさえあった。
「よしよし、そんなに熱くて堪らぬなら、儂が脱がしてやろう」
尚凞の手が夜着の前で結んだ紐に掛かる。
シュルシュルと紐が解ける音が夜陰に妖しく響いた。
「い―や」
