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たまゆらの棘

第4章 再臨

やっと半年間で三十万を貯めた。

倫は三軒茶屋に、家賃四万円のアパートを借りた。古びた畳、三畳に、猫の額ほどのような台所がついていた。線路がすぐ隣でかなりうるさい場所であったが、倫にとっては、初めての自分の部屋で、初めての自立の日々で、その胸は喜びに満ちていた。

倫は店でキッシュやケークサレというメニューをどんどん習得して行った。

藤原に、食べて貰いたかった。

(藤原…俺はきちんと生きてるよ。)

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