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たまゆらの棘

第2章 燃ゆる日々

この谷口という男はある意味、倫の人生の思い出に度々出てくる男となった。それは悪魔にとっての子守歌のようでもあった。顔は忘れてしまっても、いつも真っ白な開襟シャツに黒ジーンズ、煙草はマルボロライト…そんな印象がいつまでも倫の胸に残った。

谷口から盗んだ三万で、倫はとりあえず新宿二丁目に行った。公園に座っていれば必ず声をかけられた。一客、だいたい三万から四万まで出してくれた。だが1日に三客までが限界だった。体がついていかなかった。売春で倫はとりあえず荒稼ぎをした。客の中には優しいのもいれば縄で縛るような暴力団もいた。倫はしがらみを作りたくなかったのでリピーターとは寝なかった。いくら頼まれても。

体は軋み、倫は歳をごまかしてバーで働く事にした。
「あら。随分綺麗な子が入ったわ。」倫はすぐにママのお気に入りになった。
「ママさん、僕、住む所がないんです…」倫は打ち明けた。それを横で聞いていた女の客が口を挟んだ。「あらじゃあ、私のルームシェアにならない?彼氏と別れたばっかりで寂しくて。こんな可愛い子がいたら帰るの楽しみになっちゃう。」「あの…彼氏にはなれないんですけど…もしよかったら…」月四万円で商談成立。ママは気さくな人だが何故かこの話しにいい顔はいなかった。それはママがこの女性客をあまり好きではなかったからだ。

「恋人にはなれないって言ったのに…」倫は静かにその長い睫毛を閉じて言った。
「大人同士、楽しみましょ」今、女は倫を犯していた。女の名前は浅尾瑠璃。瑠璃はベッドにあおむけになった倫の肩を掴みながら、倫の乳首を舐めた。「あ…」倫の吐息から小さく声が漏れた。
「あんたって本当に女みたい…綺麗過ぎるし…犯しがいある…」「瑠璃さん、一度だけですよ。いいですね。」そう言うと倫は瑠璃の両手をつかんで後ろ向きにし、一気に挿入した。昔の保健医で培った女相手だ。挿入しながら局部と乳首を刺激してやった。「ああ!イク!」女がそう言った瞬間、倫はパッと離れ、床に瑠璃を突き飛ばした。「何するのよ?」瑠璃は怒って振り向いた。「遊ぶつもりならお金払って下さい」倫は冷たく言った。倫はさぞや馬鹿馬鹿しくてたまらなかった。「この家を今すぐ出ます、瑠璃さんは契約違反ですから」

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