
俺を好きだと言ってくれ
第3章 *初恋..
「あ、ちょっと待って…!
これ先生に渡さなきゃ!!」
数学の課題ノートを提出し忘れた美優が昇降口で立ち止まった。
「ごめんね…!
先に帰ってていいから!」
猛ダッシュで校内に戻り、職員室へと向かった。
『…待ってるからいいのに。』
空は呟きながらゆっくり昇降口を出た。
そのままゆっくり近くのベンチに腰掛ける。
ほとんどの生徒が帰った今、部活の声と時より聞こえる下校の生徒の会話しか聞こえない。
『――?』
ふっと大学の敷地へと目を向けた時、見覚えのある人影に目を懲らす。
スッとベンチから立ち上がり、その人影を目で追った。
悪気なんてなかった。
自然と足が動いてて、由紀を追う形となった。
由紀1人ならきっと気にも留めなかった。
由紀の隣には見たことのない男がいて、あろうことかその男に腕を絡める姿に目を疑った。
『…由紀………』
校門の前に止まる車の前で、由紀は軽く背伸びをして奴にキスをした―……
この距離でもわかる由紀の照れた表情。
俺よりも何倍も大人だと思ってた由紀があんな幼い表情をすることを初めて知った―…
