
アルカナの抄 時の掟
第8章 「隠者」正位置
「…帰りましょう」
ヴェキが言った。カオルはわずかに笑みを浮かべると、馬を引いて歩き始める。
今は、辰の刻ほどだろうか。人通りは、まだ少ない。
「…私がここにいるの、よくわかりましたね」
「ずっとあなたのを行方を探していたんですけど…実は、ここへ来た目的は、あなたを探すことではなかったんですよ」
ヴェキは、少し気まずそうに言った。ではどうしてここへ、という顔でカオルが見ると、ヴェキは表情を変えた。
「宮殿の者を、この辺りで見かけたと」
声をさらに落として続ける。
「――それも、夜半に」
ヴェキは目線だけをちらりとよこし、すぐに戻した。カオルは、はっとする。
「もしかして、セレナのことと…?」
カオルも、ヴェキを見ずに言った。
「ええ、陛下はそうにらんでいます」
私もそう思います、とヴェキが続けた。
「まだ終わってないと、アルバートは考えてるのね…」
「…宮殿やどこか屋内で話すより、外で話す方が安全かもしれませんね」
呟くように言うと、続ける。ちら、と周りをうかがうと、ちょうど、人のいる場所からは抜けていた。
「――どうやら、セレナ・リーンのほかにも、皇妃の命を狙う者がいるようなのです」
ヴェキの言葉に、カオルは首を傾げた。
「右大臣とその一派、ですよね…?」
わかっていたことでは、といった風にカオルが言った。
「私たちもそう考えていました。…ですが、どうも違うようなのです」
「どういうことですか…?」
カオルが言うと、ヴェキが歩を止めた。
ヴェキが言った。カオルはわずかに笑みを浮かべると、馬を引いて歩き始める。
今は、辰の刻ほどだろうか。人通りは、まだ少ない。
「…私がここにいるの、よくわかりましたね」
「ずっとあなたのを行方を探していたんですけど…実は、ここへ来た目的は、あなたを探すことではなかったんですよ」
ヴェキは、少し気まずそうに言った。ではどうしてここへ、という顔でカオルが見ると、ヴェキは表情を変えた。
「宮殿の者を、この辺りで見かけたと」
声をさらに落として続ける。
「――それも、夜半に」
ヴェキは目線だけをちらりとよこし、すぐに戻した。カオルは、はっとする。
「もしかして、セレナのことと…?」
カオルも、ヴェキを見ずに言った。
「ええ、陛下はそうにらんでいます」
私もそう思います、とヴェキが続けた。
「まだ終わってないと、アルバートは考えてるのね…」
「…宮殿やどこか屋内で話すより、外で話す方が安全かもしれませんね」
呟くように言うと、続ける。ちら、と周りをうかがうと、ちょうど、人のいる場所からは抜けていた。
「――どうやら、セレナ・リーンのほかにも、皇妃の命を狙う者がいるようなのです」
ヴェキの言葉に、カオルは首を傾げた。
「右大臣とその一派、ですよね…?」
わかっていたことでは、といった風にカオルが言った。
「私たちもそう考えていました。…ですが、どうも違うようなのです」
「どういうことですか…?」
カオルが言うと、ヴェキが歩を止めた。
