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Memory of Night 番外編

第5章 美少女メイドを捕まえろ!


 右手を奪われ、冷たくて堅い感触が襲う。カチャっという軽い装着音と共に、気付いた時にはすでに手錠を嵌められてしまっていた。

 呆然とする晃の前にいるのは、体操着を着た宵。化粧のみそのままだが、メイドの格好はしていない。髪ももちろん短くて黒いままだ。

 手錠を嵌めた晃の手を離し、宵は笑った。


「これで俺の勝ちだろう?」


 晃はわけがわからず、目の前のメイドへと視線を戻す。


「じゃあ、このメイドの子は一体……」

「ばーか。呼び方で気付けよ」


 呆れたような宵の声。

 メイドはにっこりと微笑み、晃の目前で片手を振って、一言。


「ハロン、アッキー」


 ああ、確かに、と思う。自分のことを『アッキー』と呼ぶ子は、晃の周りに一人しかいない。

 彼女の邪気のない声と笑顔に脱力しそうになりながら、晃は頭を抱えたくなった。

 すっかり彼女に素を見せてしまった今更優等生の皮をかぶっても無意味なのかもしれないが、それでも女性に対してのキャラを変えるのはポリシーに反するのだ。

 晃は努めて優男ふうの笑顔を貼り付け、メイドの手首をさすりながら言った。


「ごめんね、明ちゃん。手荒な真似をして。そのメイドのコスプレ、よく似合ってる。すごく可愛いよ」


 謝罪はもちろん、リップサービスも忘れずに、だ――。

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