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Memory of Night 番外編

第5章 美少女メイドを捕まえろ!


「宵」


 晃は階段の上を見据え、一段一段ゆっくりと上りながら、声をかけた。


「もうあまり時間ないんじゃない? のんびり追いかけっこなんてしていいの?」


 挑発するように言う。


「それとも、俺を捕まえる気はないの? せっかくここまで来てあげたのに、逃げるつもり?」


 一階と二階の踊場にたどり着く。晃は二階へ続く階段を再び見上げたが、宵の姿はない。

 こんな挑発に彼が乗るとも思えないが、わざわざ自分を誘い出しておいてただ逃げるだけとも思えない。

 充分に警戒し、二階へと続く階段を上る。

 ようやく上り終え、廊下に続くスペースに足を踏み入れた、ちょうどその時。

 突然壁の陰から何かが飛び出してきた。足音をほとんど立てず走り込んでくるのは、パーカーを目深(まぶか)にかぶったメイド姿の宵。

 不意打ちを狙い晃に襲いかかってくる宵の手首を、晃は逆に掴んで捻りあげた。


「……っ」


 宵が息を詰めるのも構わず、勢いに任せて近くの壁に叩きつける。


「待ち伏せ……か」


 晃は意地悪く笑った。


「最初の時と同じ手口で来るなんて、君も捻りがないなぁ。つまらない。そんなんで俺を捕まえられると思ったの?」

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