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Memory of Night 番外編

第5章 美少女メイドを捕まえろ!


「この提案、ノる? ノらない?」

「…………」


 宵は渋る。眉間に皺を寄せ、答えあぐねいているような素振りを見せた。


「……ノらないならこのまま犯すよ」

「それ俺に選択肢ねーじゃん!」


 低く囁かれ、思わず顔を上げてそう突っ込んだ。

 晃はくすりと口の端を上げる。


「まあね。手錠は鬼から奪ったやつ一つ持ってるよな? それで俺を捕まえて」

「あ……」


 右手で顎を掴まれる。晃の唇が間近に迫り、自然とキスを期待していた。

 けれども晃の唇は、宵のそれに触れるか触れないかの場所で止まる。


「キスしたいけど、グロスが落ちちゃうな。おあずけ」

「……っ、もうどけって!」


 目前に迫った晃の胸を両手で押す。

 晃は素直に宵から一歩離れた。

 本当は、グロスなんて落ちようがどうなろうが構わない。キスをして欲しかった。

 けれど、それを自分からねだるのはどうしても嫌だ。さっきだって、無理やり口淫をねだらされたばかりなのに。

 これ以上翻弄されてたまるか、と思う。


「じゃ、俺はそろそろ行こうかな。あと二時間、他の鬼から逃げのびながら、捕まえにきて」


 引き際は妙にあっさり。机の上に浅く腰かけたまま呆然としている宵を残し、晃は教室を出ていった。

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