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Memory of Night 番外編

第5章 美少女メイドを捕まえろ!


 どちらか一つを選ぶのがルールじゃないのかとも思ったが、ルールの詳細自体を覚えていないのでわからない。


「温泉旅行は一つしかないけど、君なら何度でも貸し出しできるだろう?」

「人をレンタル用品みたいに言うな。冗談じゃねーっつの」


 宵が毒づくと、不意に晃が笑った。


「まあ、いいや」


 つぶやき、宵に右手を差し出してくる。


「……なんだよ?」

「日曜日はどうぞお手柔らかに」


 艶やかな笑顔が憎い。

 晃から差し出される手を見ていても、嫌な予感しかしなかった。

 だいたい、身体能力だけを見ても晃に走りで適う気はしないし、午前中走りまわって疲れているだろうことを思えば、こっちの方が完全に分が悪いのだ。

 お手柔らかにも何もない。

 なんだか酷く理不尽だ。

 いっそ天変地異でも起きて、日曜日の文化祭、中止にならないだろうかと、宵はため息を零す。

 そんな淡い期待と絶望的な思いを胸に、宵は仕方なく、晃の手を握り返した。

 ――あとはもう、本番が無事終わることを祈るしかなかった。

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