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Memory of Night 番外編

第5章 美少女メイドを捕まえろ!


 同時に、持っていたウイッグを宵の頭に乗せた。

 声と頭への軽い刺激に、それまで息を潜めて膝を曲げていた宵は顔をあげる。


「お、なかなか似合うぞ」


 被せたウイッグは肩よりも長い金髪。犬耳のように、三つ編みにした髪が両耳の横から垂れている。


「……似合ってたまるか」


 宵は鬱陶しげにウイッグを外し、大山が持つ紙袋の中に乱暴に戻した。


「明が選んどけってさ」


 大山はしゃがみこみ、紙袋を宵に差し出す。

 宵はちらりと中を覗いたけれど、すぐに顔をしかめて袋を押し返した。


「こんなに……。ウイッグなんてアイツ一体どっから集めてくるんだよ」


 アイツというのが明のことなのは、会話の流れでわかる。大山は苦笑した。


「演劇部とかじゃないのか? 確かおまえの服も」


 大山の言葉を遮るように、宵はその灰色の瞳で睨みつける。


「そー怖い顔しなさんな。いいじゃん、文化祭の間だけ、ちょっと変わったカッコするだけだし」


 確かに、明の用意した服を着るのは文化祭の間だけ。それも日曜の一日だけだ。

 けれどもその用意された服と、日曜の、自分の役割が問題なのだ。

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