テキストサイズ

Memory of Night 番外編

第4章 Episode of AKIRA


 春風に煽られ、校庭を埋め尽くそうとするかのように舞い散る桜。その下に、少年はいた。

 肩より少し短い漆黒の髪。風でさらさらと揺れていた。

 気怠げに細められた瞳は黒ではなく、灰色。遠目から見てもわかるくらいに白い肌と全体的に線の細い肢体が、見る者に繊細そうな印象を与えている。

 ブレザーの前は開けたまま。服の袖も髪と同じく風に揺れている。

 服装から男であると判別できたが、一見すると女性にも見える中性的な顔立ちをしていた。


「あの子……」


 無意識のうちに、晃はつぶやいていた。

 視線は少年に釘付られたまま、外すことができない。

 綺麗な容姿にも惹かれたが、同時にその姿は幼い頃に叔父の店で見たあの日本人形と重なった。

 赤い着物を身に纏った、壮絶に美しかったヒトのようにリアルな人形。一瞬で心奪われたあれが、晃の脳裏にフラッシュバックしたのだ。

 晃は瞳を見開いて、少年の姿を凝視する。

 黙ってしばらく桜を眺めていた少年は、やがて物珍しげに白い手のひらを目前へとかざした。

 そんな所作の一つ一つについ見とれてしまう。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ