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Memory of Night 番外編

第4章 Episode of AKIRA


 そして――高校の入学式の、あの日。

 今までモノにもヒトにも一時しか執着できなかった心を変える、ある意味運命的な出会いが訪れた。

 その日晃は入学式の受付時間よりも少し早めに高校に行き、玄関の前に張り出された掲示板でクラスを確認した。


「あ! 晃くん!」

「やっぱり同じ高校だー!」

「何組になったの? あたし三組だよー!」


 近付いてくるのは中学が一緒だった子達だ。

 受験を口実に恋人として付き合うのは拒否していたけれど、晃の女子達への接し方は今まで通り。相変わらず慕われてはいた。


「おはよう。俺も三組だった」

「うそー! やったー一緒だよ!」

「うわーいいなぁあたし二組ー! ねえ、クラス違ってもまた勉強教えてねーっ!」

「あたしもー!」


 すでに聞き慣れたはずの女子達の甲高い声やハイテンションも、朝方だと耳障りに思える。


「うん、いいよ。今度勉強会しようか?」


 当たり障りない返答をし、顔を見合わせて喜ぶ女子達からそっと視線を逸らした。

 賑やかな人混みの代わりに茶色い瞳が映すのは、満開に咲き乱れる桜の木。

 そして、その下に佇む一人の少年の姿だ。

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