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Memory of Night 番外編

第4章 Episode of AKIRA


 晃の茶色い瞳からは、どこか憂いのようなものが滲み出ている気がして、目をそらせない。なぜだかずっと見ていたくなるような、そんな目をしていた。


「おまえ、いつも女の話する時そういう顔するよな」

「え?」


 はっとしたような顔で、晃が視線を宵へと戻す。


「前の……バレンタインの時だっけ? あの時も確か展望室で今みてーな目してた」


 どこか申し訳なさそうな、罪悪感に苛まれた目。

 あの時晃はなんて言っていたんだっけ、と朧気な記憶を辿る。

 ――喜ばせてやりたいと思えなかった。大切に思ったことがなかった。

 そんなふうに言っていた気がする。


「色恋絡みで、何か苦い経験でも?」


「……あったらどうする? 宵が慰めてくれる?」


 逆に問い返されて、宵は一瞬押し黙った。片肘をついてそこに顎を乗せた体勢のまま、何度か目をしばたたかせる。

 そして、意地悪く口元を歪めてみせた。


「やーだね。むしろえぐってやる」


 軽く舌を突き出してそう言うと、晃は小さく苦笑する。


「えぐるだなんて悪趣味な」

「……おまえが好きそうな言葉だろう?」

「俺はそんな魔女みたいな顔で言わないよ」

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