テキストサイズ

Memory of Night 番外編

第4章 Episode of AKIRA


 確かにあのシャツの件から始まり、上から下まで全てを揃え終えるまでに、若い店員の子と話す機会は多かった気がする。

 だけれど晃にしてみれば、ちょっかいを出している自覚はなかった。

 むしろ、手を出されていたのは宵の方だと思う。

 こういうところに来慣れていないせいか、春の新作やら期間限定商品やらの値引きのきかない高いものを次々と勧められていたのだ。それを上手くあしらえないようだったから、店員の気をそらす手助けをしてやっていただけのつもりだった。

 それでも、改めて指摘されるとやりすぎな感じがしないでもない。


「んー……昔の癖なんだろうな」


 空(から)になった食器を置いて、晃はつぶやいた。


「癖? ナンパの?」

「いやいや、俺がいつナンパなんてしたよ?」


 晃は笑って宵の言葉を一蹴する。

 けれどもふいにその笑みが消え、視線は目の前の食器へと移る。


「ナンパ……はしてないけど、いろいろと遊んではいたからなー」


 昔を思い返すような顔で、晃はそう口にする。

 宵は片肘をついて、晃の瞳をじっと見つめた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ