
胡蝶の夢~私の最愛~⑪【夢路・ゆめじ】
第4章 《新たな始まり》
「泉水、どうした?」
泰雅は泉水の身体をそっと壊れ物を扱うような仕草で仰向けにすると、その貌を覗き込む。
「泰雅さま」
泉水はやっと良人の名を呼んだ。
「ん?」
泰雅が泉水の髪をひと房指で掬う。乱れた黒髪がひと筋頬にかかってるのを払ってやり、静かに額に口づけを落とした。
「何故、泣くのだ?」
泉水の眼には涙の雫が宿っている。冴え冴えときらめくその露の雫を泰雅は唇で吸い取った。
「私は怖い」
「何が怖いのだ?」
問えば、泉水はまだ身体を震わせながら呟いた。
「自分が自分でなくなるようでー怖いのです」
泰雅と過ごす夜を重ねる度に、変化してゆく我が身が怖ろしい。泉水は最近、よくそう思う。泰雅の指一つで、泉水は自在に変化する。その変わってゆく自分は、これまでの自分がよく知る泉水では全く別の女であった。
泰雅によって、未知の領域へと導かれ、入り込んでゆく我が身が泉水は怖ろしくてたまらなかったのだ。
「私はこんなにもはしたない、淫らな人間だったのかと思うと、死にたいほど恥ずかしい」
泉水が頬を染めて言うと、泰雅は笑った。
「それで良いんだよ、泉水。女にしろ男にしろ、一度知ってしまえば、変化してゆくのは、むしろ当然のことなんだ。昼間どんなに悟りきった顔をしている真面目な奴でも、閨でどんな顔をしてるかは判らねえ。それが人間の、男と女の面白い不思議なところなのさ。閨の中でどんな風になろうと、それが相手を傷つけたりする行為でない限りは、たいがいは許されるんだ。むしろ、俺は泉水、そんな風に変わってゆくそなたを可愛いと思うし、これからもどんどん変わってゆくお前を見ていたい」
泰雅の噛んで含めるような言葉に、泉水は小さく頷いた。
「泉水、お前は本当に可愛いな。可愛いよ」
泰雅は泉水の胸に顔を近づける。ふくよかな乳房を口に含まれ、泉水はまた小さな声を上げた。
泰雅は泉水の身体をそっと壊れ物を扱うような仕草で仰向けにすると、その貌を覗き込む。
「泰雅さま」
泉水はやっと良人の名を呼んだ。
「ん?」
泰雅が泉水の髪をひと房指で掬う。乱れた黒髪がひと筋頬にかかってるのを払ってやり、静かに額に口づけを落とした。
「何故、泣くのだ?」
泉水の眼には涙の雫が宿っている。冴え冴えときらめくその露の雫を泰雅は唇で吸い取った。
「私は怖い」
「何が怖いのだ?」
問えば、泉水はまだ身体を震わせながら呟いた。
「自分が自分でなくなるようでー怖いのです」
泰雅と過ごす夜を重ねる度に、変化してゆく我が身が怖ろしい。泉水は最近、よくそう思う。泰雅の指一つで、泉水は自在に変化する。その変わってゆく自分は、これまでの自分がよく知る泉水では全く別の女であった。
泰雅によって、未知の領域へと導かれ、入り込んでゆく我が身が泉水は怖ろしくてたまらなかったのだ。
「私はこんなにもはしたない、淫らな人間だったのかと思うと、死にたいほど恥ずかしい」
泉水が頬を染めて言うと、泰雅は笑った。
「それで良いんだよ、泉水。女にしろ男にしろ、一度知ってしまえば、変化してゆくのは、むしろ当然のことなんだ。昼間どんなに悟りきった顔をしている真面目な奴でも、閨でどんな顔をしてるかは判らねえ。それが人間の、男と女の面白い不思議なところなのさ。閨の中でどんな風になろうと、それが相手を傷つけたりする行為でない限りは、たいがいは許されるんだ。むしろ、俺は泉水、そんな風に変わってゆくそなたを可愛いと思うし、これからもどんどん変わってゆくお前を見ていたい」
泰雅の噛んで含めるような言葉に、泉水は小さく頷いた。
「泉水、お前は本当に可愛いな。可愛いよ」
泰雅は泉水の胸に顔を近づける。ふくよかな乳房を口に含まれ、泉水はまた小さな声を上げた。
