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O……tout……o…

第1章 おとうと

 25

 ガチャ……
 意識の片隅に、部屋のドアの開く音が静かに聞こえてきた。

 ミシ、ミシ、ミシ……
「………………」

 え…
 そして部屋を歩く足音が…
「………ぁ………あーちゃん……」
 小さな囁きが…

「………………………」
 どうやら、しんちゃんが、部屋に入ってきたようであった。

 そしてわたしは薄目を開けると…
 暗闇の中、しんちゃんのシルエットが
「はぁ、はぁ、はぁ…」
 やや荒い息遣いと共に… 
 ベッドへと近付いてきたのである。

「……………」
 わたしは無言で、ベッドの上でカラダを起こす。

「ぁ………」
 するとしんちゃんのシルエットは、小さな声を漏らす。

 なんとなくわたしは、寝落ちする前の鏡を見ながら逡巡している時に、しんちゃんがこうして忍んでくるのではないか?…
 いや、何かが起きるのではないか?…
 そう想っていた。

 いや、今、思い還すと…
 しんちゃんを待っていたのかもしれない。

「ね、眠れないの?…」
 だからわたしは驚きの声ではなくて、そう優しく声を掛けた…
 いや、掛けられたのである。

「ぁ……う、うん…」
 だからしんちゃんもそう素直に頷き…

「お、おいで…」
 わたしは両手を開き…

「う…あ、あーちゃん…」
 しんちゃんをベッドへと招き入れたのだ。

 夕方のあの衝撃の出来事により、いや、あの未知の快感と昂ぶりに…
 そしてこの夜の静けさと、暗闇の安心感に…
 わたしはしんちゃんというオトコを、また、あの未知の快感を求めていたのだと思う。



「あ、あーちゃん、はぁ、はぁ、はぁぁ…」
 そしてしんちゃんの息遣いが一気に興奮の喘ぎに変わり、ベッド上のわたしに抱き付いてきた。

「あっ、んっ、んん、し、しんちゃん…」

 そこでわたし達は初めて、お互いを求め合うキスを交わしていく…
 いや、キスがしたかった。

 ドキドキしてはいたが…
 もう夕方に経験済みであったし、強い緊張感もあったのだが…
 もう、キスに対しての戸惑いは無かった。

 なぜならば、期待していたから…
 こうしたかったから…
 あの夕方に体験した禁断で背徳な快感をまた再び求めていたのだろう。

 そして逆にこの夜が、いや、この夜にしんちゃんが忍んで来なければ…
 この後の、次の日からは無かった事にできたのかもしれない。



 

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