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スイーツ・スイーツ

第1章 プロローグ



また、あの夢だ。

夢のなかで夢だとわかる夢──明晰夢。

真っ暗な地面に、私は縛りつけられている。
仰向けだが、空も真っ暗で何も見えない。

地面――というのは正確ではない。地面に敷かれた線路だ。
そこに縛りつけられるということは、列車に轢断される運命にあるということだ。

友人の清水鏡子によると、江戸川乱歩の作品によく似たシーンがあるというが、乱歩作品の被害者には美少女しかいないから、やっぱり違うな、と鏡子は言いやがった。

タタン、タタン。

来ました。

ここで目が覚めるラッキーな日もあるし、
見事にノンブレーキで電車が走破したあと、バラバラになった私のパーツを、第三者の視点から見ることもある。
なぜか服は消失し、マネキンのパーツが散乱したようになる。
マネキンだからか血は流れず、奇妙にエロチックな眺めになる。

鏡子によれば、これも江戸川乱歩の作品に死体をそのまま石膏像にしてしまう猟奇シーンがあるそうだ。
裸婦像の中身が本物の裸女の死体というわけで、これもエロチックだ。

タタン、タタン。

推理小説のネタバレをした報いらしい。
今日は列車の音がクレッシェンドする。
さらに、前照灯で周囲が明るくなってきた。

ああ、今日は、助からないようです。

先立つ不幸をお許しください。

戒名には、名前の「若葉」からひと文字を入れてください。

タタン、タタン・・・・・・

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