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愛されてると勘違いだったので、推し活をやめようと思います

第7章 【選択1】

彼の名前を呼ぼうとしてハッとした。
私は彼の名前を知らない。ただ困っているところを助けてもらっただけ。
そんな人を巻き込むわけにはいかない。



「やめて! 彼は関係ないっ!」



男が少年の胸ぐらを掴んで殴ろうとしたので、とっさに叫んだ。



「……家に帰るからっ……」



私は声を振り絞って言った。
男二人は満面の笑みを浮かべると、私をコンビニの外に停めてある黒塗りの車まで連れていこうとした。



「おい、待てよ!!」



オレンジ頭の少年が追いかけてきた。



「お前、それでいいのかよ!? こんなスラム街に頼りたくなるほど、そこが嫌だったんだろ!? お前の覚悟はそれだけのものだったのかよ!!」

「……っ!」



彼の言葉が心臓を鷲掴みにする。
名前も知らないさっき会ったばかりの彼は、私の覚悟を尊重してくれていた。



こんな世間知らずのお嬢様なのに、私の覚悟に心動かされ、私に協力しようとしてくれている。



――ううん、彼は私がお金を持っているから助けてくれただけ。



そんな思いが頭をよぎった。



――お金が一銭もないと知ったら、きっと助けてくれないだろう。



「私は……」




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