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それからというもの、沙耶香とはほとんど会わなくなった。

今までは、僕か沙耶香のどちらかが偶然を装って、意識的に行動したので駐車場で会ったのだ。考えてみれば、他の住人とはほとんど会わない！何も考えず生活していれば、アパートの住人はそんなに会うことはないのだ。

そんなある日の夜、外で人の話し声が聞こえる。

男と女が話しているようだ。１人は沙耶香なのは間違いない。もう１人の男は誰だろう？

そのうち一通り話が終わったようで、階段を登る足音が聞こえた。そして、下の階でもドアの閉まる音がする。おそらく沙耶香と上のチャラい男が話していたんだと思う。

そう思うと、いてもたってもいられなくなった。

沙耶香は、基本的に男好きなのである。それは、沙耶香の言動からも、アパートの管理人のおじさんの話からも明らかだ。僕がダメだということで、違う男に興味を持ったのかもしれない。

以前沙耶香と話していて住人の話しになったとき、沙耶香は驚くほど住人の情報を知っていた。そして、２階のチャラい男のことを、

「彼には彼女がいるのよ！この前駐車場に見たことない車が止めてあって、朝早く２階から女の人が降りてきてその車に乗ったの！２階に女の人は住んでないから、彼のところに来てたのよ！あの人モテそうだもの…。女の扱いに慣れてる感じで…。」

と、少し嫉妬混じりの雰囲気で僕に話していたのだ。

僕は、沙耶香が次のターゲットをあのチャラい男にしたのかもしれないと思うと、沙耶香のことは諦めようと決めた意思が簡単に揺らいでしまっているのを感じた。

僕と沙耶香が距離を保つのは我慢できるが、あの男に取られるのは我慢出来ない。しかも、沙耶香が僕のときと同じように

「見せて？」

と言ったら、あのチャラい男のことだ。何のためらいもなく見せるだろう！見せたら沙耶香は、躊躇なくその見せられたモノを好きなようにするだろ。僕のときも沙耶香には、その雰囲気が醸し出されていたから僕には分かる。

おそらく、誰かが制限を加えない限り、そういう方向に進むのは時間の問題だと思った。

僕の心は、沙耶香のことを諦めたにも関わらず、不安でいっぱいになっていた。